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2008年12月

サマー・バレンタイン #2

ざわざわと胸騒ぎがする。
ドクドク鳴ってる心臓を落ち着かせながら、彼らの会話の断片を繋ぎ合わせ、その内容を理解した瞬間、私は頭のてっぺんからつま先にかけて、ぐさりと稲妻がつき刺さったかのような衝撃を受けた。

一瞬にして目の前が真っ暗になる。
先週、山本くんが隣のクラスの女の子に告白されて付き合い始めた、という信じたくない内容だったから。
山本くんはそのことをネタに冷やかされて怒っているのだ。

怒っているといっても本気じゃない。
だって目が笑っている。
きっと照れているだけだ。
幸せそうな山本くんがそこにいた。

そんな山本くんとは対照的に、呆然としている私を心配そうに見つめる友達の表情が視界の端に映った。
みんなの楽しい雰囲気を壊したくなくて、「平気」って笑ってみせたけど、上手く笑えているのか自信はなかった。

その後のことは何も覚えていない。
楽しみにしていた友達との約束も、成績表の中身も、家まで帰ってきた道のりも。
私は突然突きつけられた現実を受け入れることができなかった。
今はまだ何も考えたくなくて、制服を脱ぎ捨てると頭から布団を被ってひたすら眠った。
手っ取り早い現実逃避だ。
そんなことをしたって、何も変わらないのは分かっていたけれど。

私は夏休みのスタート地点で転倒し、走り出す前に再起不能に陥った。

 

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サマー・バレンタイン #1

うちの冷凍庫の中には、過去3年分の私の一方的な想いが詰まった、行き場のないバレンタインチョコレートが後生大事に保存してある。

「いいかげん、邪魔だから早く片付けて」
毎日のようにママから口うるさく言われるけど、毎年増え続けるこの想いの結晶を、私は、渡すことも食べることも捨てることもできないでいる。
彼はきっと、このチョコレートの存在すら知らないだろう。

可哀相なチョコレートたちは、毎日冷たい箱の中で、いつか誰かに食べてもらえることをひっそりと夢に見続けている。
だけど私は、このチョコレートたちが、誰かに食べてもらえる日なんて、永遠に来ないような気がしていた――…。

 

今日は高校に入って初めての終業式。
これから始まる長い休暇への開放感と期待感からか、教室全体がざわざわとうるさく、皆浮き足立っていた。
私も例に漏れず仲のいい子たちと集まって、海や花火に行く計画を立てて盛り上がっていた。

だけどその一方で、私は、中学時代からずっと片想いしている山本くんたちのグループが、他のどのグループよりも大きな声で騒いでいるのがすごく気になっていた。

長い長い夏休みの間、山本くんに会えないことがすごく寂しい。
せっかく高校でも同じクラスになれたのに、私と彼の関係は中学時代から何も変わってない。

ただのクラスメイト。
いつも遠くから見ているだけの私。
同じ教室の中にいるのに、私と彼がいる場所は、途方もなく遠く離れているように感じる。
自然と小さなため息が漏れた。

さりげなさを装って、ちらりと彼らのグループを見ると、いつも一緒にいる田代くんや三島くんに冷やかされて、耳まで真っ赤にして怒る山本くんが輪の中心にいた。
いつもはクールな山本くんのあんなに動揺している姿を見るのは初めてで、驚いた。

私は思わず他のノイズに混じって途切れ途切れに聞こえてくる、彼らの会話に耳をすませた。

 

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