サマー・バレンタイン #11
「山本だろ。アタリ?」 田中くんが何でもないことのように言い当てたので、私は自分の口を覆っていた手を外して訊ねた。 「何で?何でそんなこと、田中くんが知ってるの?」 お互いに、恋愛話なんてしたことなかったはずだ。
「だって今日、教室で山本に彼女できたって騒いでたじゃん。 タイムリーすぎ」 いたずらっ子のような表情で、田中くんがそう答えた。 「そういえばそっか……うん、そうだよね。 確かにタイミングぴったり――…」
私はすんなり納得しそうになって、すぐに気がついた。 「もしかして私、ヤマをかけられたんじゃ……」 「違うって。そーゆー解釈もあるぞって話。 中川さ、いっつも山本のこと見てるし。 隠してるつもりかもしんないけど、俺の席からだと丸分かり」 そう言って、田中くんは軽く肩をすくめた。
一学期の中間試験が終わった頃、出席番号順だった席をくじびきで席替えした。 山本くんは窓側の前から三番目の席になり、私はその斜め後ろの席になった。 前を向くだけで、彼の横顔が視界に飛び込んでくるお気に入りの席だった。
確かに私の後ろに座っていた田中くんなら、私がいつもどこを見ていかなんてお見通しなのかもしれない……けど。 「そんなあからさまに見てたつもりはなかったんだけど……」 むしろ誰にも気付かれないよう、こそこそと盗み見ているつもりだったし、今までそれでバレたこともなかった。
私の気持ちを知っているのは、仲のいい女友達数人だけ……のはず、なのに。 動揺する私の姿を見て、田中くんは大げさにため息をついた。
「てゆーかさ、そこで、何で俺が中川の視線の先を気にしてるのか、ってことは考えたりしないんだ?」 「……え?」
私の反応に、田中くんは再び大きなため息をついた。
↓よろしければクリックお願いします
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (0)


最近のコメント